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子育て支援


こんにちは!助産師の土屋です。

私事ですが、2020年ご縁があり待望の我が子を出産しました。

10ヶ月を迎える娘の育児に奮闘する中で、日々感じるのは夫をはじめとしたサポートのありがたみです。今回は「子育て支援」について取り上げます。



助産師として仕事の中で、目の前の妊婦さんに必ず一度は確認することがあります。


「妊娠中〜産後育児を助けてくれる人はいますか?」


周囲のサポート状況です。

誰が、どのような時に、どの程度助けてくれるのか。

気兼ねなく頼ることはできるのか。

ただ助けてくれる存在の有無だけでなく、なるべく具体的に、何をサポートしてくれるのか。そのサポートで安心して子育てに臨めるだろうか。


そんな風に少し踏み込んで確認することもあります。

例えば、「夫がメインで手伝ってくれます!でも家事は何もできない人です!」では、心許ない。ならば、妊娠中から家事も練習していきましょうよ、なんて具合に話を進めます。


サポート状況や育児に不安があれば、産後ショートステイを利用したり、地域にいる開業助産師に訪問して貰うこともできます。家事など日常生活のサポートや子供の一時預かり、保育園の送迎をおこなってくれる支援団体もありますよ。

こうした子育てに関する社会資源を活用することもおすすめです。

子育て支援事業は、各自治体やNPO法人、社会福祉法人、民間事業者などさまざまな分野で展開されています。具体的には、気軽に集えるような居場所の提供や、専門家による講演会や個別相談・訪問、親子で遊べるようなイベントの企画、実に多彩です。

実際、自分が支援を受ける立場となって改めて「世の中にはこんなに色々な種類の子育て支援が存在していたのか!」と学びました。地域によって子育て支援内容は多少異なるので、保健センターなどの窓口に尋ねると良いでしょう。


こうした情報を「知っておく」ということはとても大切!

子育て支援も手厚く広がってきているので上手に活用できると良いですよね。


ところが、現在コロナ禍においては、実際の対面で受けられる支援は中止、もしくは制限が加えられていたり、支援を受けるお母さん側が新型コロナウイルス感染を心配して気軽に外に出られないなど、コロナ以前に比べてこうした支援が受けづらい状況となってしまいました。

ベネッセ教育総合研究所が行った、「新型コロナウイルス感染症の影響による生活環境の変化」の調査では、母親の約7割が「子どもがうまく育っているか不安になる」と回答しています。さらに、松島らの調査では、出産後1年未満の母親のうち「産後うつ」の可能性がある人はおよそ24%にのぼり、新型コロナウイルスの影響で以前の2倍以上に増えているおそれがあることがわかりました。


本来支援を受けるべき親子が、受けられないのは由々しき事態です。

コロナ対策として、最近ではSNSやzoom等を利用したオンラインでの相談やプログラムも随分増えてきました。個人的には対面に勝るものはないと考えていますが、家に居ながら受けられる手軽さもあります。是非、情報をチェックしてみてください。

ちなみに、産後の妻の精神状態に関する知識を持っている夫は、より家事・育児をサポートしており、妻のストレスや育児不安軽減に関連していることが明らかになっています。産後うつ予防のためにも妊娠中から妊婦さんだけでなく、夫(パートナー)または主なサポーターも産後の知識を持てるよう準備していただきたいものですね。



さて、ここから私自身の経験をご覧ください。




娘を出産し退院後、産後1ヶ月は義理の実家、その後1ヶ月は遠方の実家へ帰省、さらに夫がその後1ヶ月育児休暇を取得してくれて随分助かりました。そして現在も家族のサポートを継続的に受けられています。サポート体制としては充分!!( ´▽`)


・・・にも関わらず。こんな私にも出現しました。育児中のうつうつモヤモヤ期。

我が子と二人きりで過ごしていると、心がどこかにふっと飛んで行ってしまう。

頭がぼんやりとして、社会から取り残されたような虚無感。

我が子は可愛いのに、よくわからない漠然とした不安にかられて涙が出てくる。

産後5−6ヶ月頃、明らかに心の状態が落ち込んでいる時期がありました。


昼夜問わずの育児で睡眠不足。慢性疲労状態。

ホルモンバランスの変化で気持ちのアップダウンはジェットコースター。

家にずっといるのに、家事も思い通りに進まない。

コロナで更に閉ざされた環境。狭い世界。

家族にはこんなに良くしてもらってるのに・・・

ぐるぐるぐる。もやもやもや。


・・・これは、まずい!!!


自分を客観的に捉えても、今のままだと良くない、と感じました。

コロナ禍ということもあり極力不要不急の外出は避けていましたが、今回ばかりは近所にある子ども家庭支援センターの親子広場に足を運ぶことにしました。もはや、不要不急の状況ではなかったのです。

親子広場の玄関では「はじめてですか?よくいらっしゃいましたね!」と、笑顔で保育士さんが迎えてくれました。玄関先で手を洗いながら、涙がこぼれたのを忘れません。

「ここに来て良いんだ。ここに居ても良いんだ。」

家庭以外にも居場所があることが、こんなにもありがたいこととは思いませんでした。

保育士さんとお話をしたり、我が子以外の子どもたちの様子も見られて、とても癒されました。心から「行ってよかったな」と思ったのです。


子育て支援は数多く存在しています。

でも、利用するかしないかは、利用する本人に委ねられています。

多忙な子育て中、一歩外へ出ることは億劫に感じることもあるかもしれないし、「私は大丈夫!」と思うかもしれません。

ただ、私個人の経験から言えば、意識的にほんの少しでも外の世界と繋がっていて欲しいな、と思うのです。ちょっと最近心が疲れたな、と思ったら、気兼ねなく周りにヘルプを出すと、心の持ちようが少し変わってくるかも・・・


そして、もう一つ。日々救われていることがあります。

娘を連れて散歩していると、たびたび近所の方が声を掛けてくれます。

「あら、かわいい」「子育て大変でしょう、がんばってね」

「良い子だね」「何かお手伝いできることはありますか」

数々の温かい言葉たち。ちょっとした交流がとても励みになっています。

(この場を借りて、心からありがとうございます泣)


ご近所関係の希薄化が言われている昨今、通りすがりのちょっとした一言や、我が子を見つめてにっこりとしてくれるその仕草が、支えに、励みになる。

うつうつとした気持ちが、晴れていくのです。


「子育て支援」と聞くと少し堅苦しくも聞こえるかもしれません。

しかし、こうした交流は誰でもできる、一番身近な子育て支援のあり方の一つだな、と身を持って体験しているのでした。




NPO法人 地域医療連繋団体.Needs

助産師 土屋啓子




<参考文献・資料>

●坂野藍子・中西伸子,夫の妻の産後の精神状態における知識と妻の育児ストレスとの関連,奈良看護紀要VOL14.pp19-27,2018

●荻田純久・西本実苗・松井典子・浜崎由紀・土屋寿子,宣言中の母親のストレス状態と子育て支援に関する研究,大阪商業大学共同参画研究所紀要pp17-42,2021.

●ベネッセコーポレーション「新型コロナウイルス感染症の流行とそれに伴う生活環境の変化」に関するアンケート調査https://blog.benesse.ne.jp/bh/ja/news/20200805_release.pdf

●NHKweb特集「産後うつ」倍増か〜一人で苦しまないでhttps://www3.nhk.or.jp/news/html/20201016/k10012665491000.html

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