途上国カンボジアでの暮らしから今後の日本を見据えて
代表の進谷です。
想いあって4月19日より特定非営利活動法人 ジャパンハートの長期医師ボランティアとしてカンボジアで医師として活動しています。
子供たちと運動会をするためにカンボジアのバンテイメンテン州を訪れたのが2年前
その時はまだ、こうやってカンボジアの地で生活し、医師として活動するとは想像していませんでした。
ただ、その時に訪れたキリング・フィールド(ポル・ポト政権下のカンボジアで、大量虐殺が行われた刑場跡)で知ったカンボジアの暗い歴史と、暗い過去がありながらも今を逞しく生きる子ども達の笑顔に惹かれ、もっと一緒にいて多くのことを感じたいと思ったのは確かでした。
ご存知の方も多いとは思いますが、
カンボジアでは1975年以降、ポル・ポト氏(組織クメール・ルージュのリーダー)が政権を握ったことで、過酷な時代へと突入します。
ポル・ポト氏が目指したもの「原始共産主義」
それは、遠い昔の狩猟採集社会を理想モデルとした社会
階級や格差のない平等な社会
平等と聞くと聞こえはいいですが、「知識は人々の間に格差をもたらす」という偏った思想の元、知識人は不要として、医師や教師、宗教家、文化人といった人々を理不尽に処刑しました。
また、何も知らない子ども達は
「悪質な思想に染まっておらず、原始共産主義社会を良く理解する」
という理由から積極的に社会的な役割(兵士や監守、医師など)に就かせ、子どもが大人を監視し、殺すという状況を生み出しました。
そんなポル・ポト氏も元々は教育者だったというから驚きです。どうしてその様な思想になってしまったのか。
医療文化もポル・ポト政権により崩壊しました。
ポル・ポト政権中はもちろんのこと、終戦後も生き延びた医師は45人。
それでは医療が行えないと、およそ700人の生存した医学生をそのまま医師とし、医療が行われる様になりました。
教育を受けていない医師に教育が出来るわけがなく、後世にきちんとした医療教育が行われない負の連鎖が生まれました。それは国民の医療への不信感へと繋がりました。
独自の伝統療法も広まりました。(痛み止めにコインで体を擦ったり、色々ある様です。今後適宜報告させて頂きます。)
その影響は今現在でも沢山残っています。
その状況を知り、2人の看護師さんが視察にきたことがきっかけでジャパンハート によるカンボジアでの医療活動が始りました。
初めは巡回診療がメインだった活動も、2016年5月9日にウドンという都にAsia Alliance Medical Center(AAMC)がオープンして、病院での診療が始まりました。
僕は今、そのAAMCで活動をしています。
医師としての診療活動はもちろん、カンボジア人医師の教育、そして、ジャパンハートのスタッフとして、それ以外にも自分に何ができるかを日々模索しています。
また、医療だけでなく、生活環境や教育、文化、価値観など、様々な側面に視野を広げて、多くのことを学ばせて頂きたいと思っています。
それが今後の日本での活動に繋がると確信しています。
あくまで僕の人生のテーマは
「日本で人が健全に生きることができる社会を実現させること」
しかし、その過程でカンボジアでも何かしらの貢献が出来たらと思っています。
まずは今年1年間の滞在を予定しています。
これまで見てきた日本の現状、そして、これから見る途上国カンボジアの現状。自分の持ちうる感覚全てを介して経験したものを自分の中で整理して、「医療の本質が何なのか」を少しでも掴めたらと考えています。
また、カンボジアに来てもうすぐ1ヶ月が経とうとしていますが、まず感じたことは、医療というものが如何に多くの人の支えがあってはじめて、行うことができているかということでした。
医療資源はもちろん、水や電気ひとつとっても日本では当たり前の様にあるものが、ここでは当たり前にはありません。
マンパワーももちろん足りませんので、役割も幅広くあります。診療をするだけが医師の仕事ではありません。
色々なことを工夫しながら、必要なこと、できることをやっていかなければなりません。
ただ、カンボジアにも当たり前に存在するものがあります。
それは「家族」です。患者さんの家族が病院の中で大きな役割を担ってくれています。時には人知れず病院の掃除をしてくれている人もいます。
ここでは当たり前に家族も医療者です。
もちろんそれ故に色々改善しなければいけないことも多々ありますが、少なくとも今の日本には当たり前にはない光景だなと感じました。
この1ヶ月はこれまで関わってくれた全ての人に改めて感謝の気持ちを持つきっかけになりました。それだけでも本当に来てよかったと思っています。
ジャパンハートでは短期ボランティアも募集しています。
少しでも興味を持ってくださった方は、ぜひ足を運んでみてください。それだけの価値がここにはあると感じています。
この様な形でただ経験するだけではなく、現地からこの1年間の自分の経験を少しでも皆様に共有できたらと思っています。
あくまで僕個人が感じたままを記載することになりますが、みなさんにとっても何かのきっかけにして頂けたらと思っています。
代表理事 進谷 憲亮
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