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インフルエンザ感染症について


東京で小児科医をしています、土屋宏人です。 今回はインフルエンザ感染症についてお話しします。 インフルエンザ感染症はインフルエンザウイルスにより起こされます。 症状は発熱、咳、咽頭痛、鼻汁、節々の痛み、頭痛、寒気、嘔吐や下痢などです。 どのように感染が拡大していくかというと、主に飛沫感染です。 飛沫感染とは、咳やくしゃみの際に出る飛沫に含まれる ウイルスが結膜や口腔や鼻腔の粘膜に到達して成立する感染です。 発症後3-4日がもっとも感染力が強く、発症の1日前から 発症後5-7日まで感染性があるとされます。 小児や免疫力が弱い方だと7日以上に感染性が持続するかもしれません。 感染した場合、登校基準は発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過してからで、登園基準は発症した後5日を経過し、かつ解熱した後3日を経過してからとされています。

この基準は発症後5-7日間という感染性を考慮すれば妥当性があるものと考えられ 基準を遵守すれば登校・登園許可書のために受診する意義がないと沖縄県は声明を出しています。(インフルエンザ治癒証明書を求めることについてhttps://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/chiikihoken/kekkaku/inful_chiyushomei.html)



一般にほとんどは重篤にはならず、受診や服薬を必要とせずに2週間以内には回復しますが、なかには合併症を起こして入院したり、その結果亡くなる方もいます。合併症は肺炎、気管支炎、副鼻腔炎、中耳炎などです。また、喘息や心疾患などの慢性疾患の調子を悪くさせることがあります。合併症を起こしやすい方に、65歳以上、5歳未満、妊婦、喘息や心疾患や脳卒中や糖尿病やHIV/AIDsを患っている方、癌患者、神経疾患の小児などが挙げられます。小児についてもう少し追加しますと、2歳未満の児は特に高リスクとされます。さらに6ヶ月未満の児はワクチン接種ができないこともあり最も高リスクです。接種可能かどうかはケースバイケースとはなりますが、基本的にインフルエンザの最適な予防法はワクチンです。インフルエンザワクチンは接種により感染しなくなるわけではありませんが、各人の合併症のリスクを下げたり、集団として流行を減らすことに寄与します。6ヶ月未満、過去にインフルエンザワクチンやそれに含まれる物質で生命に危険を及ぼすアレルギーを起こした方以外はワクチンをすべきとされています。



発症を疑った場合は迅速検査を施行します。

ただし検査結果が全てではありません。

流行状況によっては本当はインフルエンザではないのに、検査でインフルエンザが陽性とされることもあります。

反対のこともあり、インフルエンザなのに検査では違うとされることもあります。

その場合でも医師が臨床的にインフルエンザと診断することもあります。

もし感染してしまった場合は、発症2日以内に抗インフルエンザ薬を開始することが望ましいとされます。症状を軽くしたり、1日分ほど有症状期間を短縮したりします。ただし、あくまでワクチン接種が最も大切で抗インフルエンザ薬はこれに変わるものではないことを強調させていただきます。

抗インフルエンザ薬は先ほど挙げた高リスクの方、重篤な症状の方、入院加療している方に推奨されています。


ただし、抗インフルエンザ薬が死亡や重篤な合併症のひとつの脳症を減らすという強い根拠のあるデータは現状ないようです。

感染者との接触後の予防内服はルーチンには推奨されません。

ただし、先述の高リスクの方でワクチン接種から2週間以内あるいは未接種、重度の免疫不全やワクチン接種の効果がない方は適応とされます。予防内服開始後は発熱や咳などが出現したら、予防投与から治療投与に切り替える必要があるので受診の必要があります。

予防投与は感染者との接触から48時間以上経っている場合は推奨されません。

抗インフルエンザ薬の一つであるタミフルですが、服用の有無によらずインフルエンザ感染症で異常行動が見られることはあるとして、薬の添付文書の10代への使用を原則として差し控えるようにするという指示が削除されました。

まとめますと、①ワクチンは積極的に接種すべき、②合併症を起こしやすい高リスクの方は発症から2日以内に抗インフルエンザ薬開始を推奨、③本来登校・登園許可書は不要というところでしょうか。



なお、基本的に救急に受診する必要はない疾患ですが、下記の様子があれば速やかに受診を推奨とされています。

小児)呼吸が早い・息苦しい、皮膚が青白い、水分摂取不良、意識や反応がおかしい、抱っこしていないと泣き止まない、一度改善したが再度発熱して咳が悪化、発疹を伴う、泣いている時に涙が出ない、オムツの尿が明らかに少ない

成人)呼吸が苦しい、胸や腹部に疼痛がある、突然のめまい、意識の異常、持続的な嘔吐、一旦改善したが再度発熱して咳が悪化


参考:Centers for disease control and prevention(https://www.cdc.gov/flu/index.htm)


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